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「個人課税の諸問題」

平成19年10月23日(火)杉並区立産業商工会館3階講堂にて水野 勝先生(当会名誉顧問、元:大蔵省主税局長、国税庁長官)をお迎えし、「個人課税の諸問題」と題し講演会を開催いたしました。
講演要旨は、次のようでした。(文責:倉田)

負担は個人、納付は法人 - 現実的、効率的税制

税金には個人が負担する税(所得税)と、法人が負担する税(法人税)がありますが、近代の民主主義国家においては、個人が社会を構成しているので、重みがあるのは個人所得税の方であると思います。国や地方の施策は、個人の福祉のためにやっているわけで、そう考えると、中心になるのは、やはり個人が負担する税金であるべきであろうと思うわけです。しかし、実際に経済活動を動かしているのは法人であり、税の納付も多くは法人が行っています。現在、わが国の租税負担率は25.1%で、この内の4分の3は所得税、住民税、消費税、相続税等で個人が負担しているわけですが、納付するのは相続税は別として、大半が法人です。 この面で、わが国の税制は、負担は個人、納付は法人という、非常に現実的で、かつ効率的な世界にも珍しい税制となっています。

個人課税の充実 - 出る方と入る方両方に課税

世界的に見ると、日本の法人課税は諸外国より負担が重く、かつ納付の事務もお願いしているので、これ以上、法人に負担をお願いするのは現実的でないと思われます。 これに対して個人課税は諸外国に比べて負担割合は低く、今後税制を考える方向としては、やはり個人課税ということになるのではないかと思われます。 個人は働いて所得を得、その所得で商品やサービスを購入し支出する。つまり個人は、収入と支出の二つの側面を持っているので、入る方と出る方のどちらが、より課税にふさわしいかということになるわけです。

所得の出る方に着目し消費一般に対して課税する間接税は、ヨーロッパではどこの国でももっていますが、第1次世界大戦の戦費調達と戦後処理のために「お金が足りないからつくる」ということで、取引高税的な形から出発しています。 これに対し、日本では、昭和50年代の安定成長期に入り、税収はかってのように増収が見込めず、一方社会保障費は増え続けるという状況の中で、もはや所得だけでは十分な歳入がまかなえないということから、当初、増収目的で間接税導入論議が始まり、「一般消費税」、「売上税」と変遷を経て、昭和63年に竹下内閣で「消費税」として成立した時には、「所得税、法人税を大減税して新しい間接税を創り、ネットで減税する」という世界でも稀な形で誕生をしています。要するに、ただ金が必要だからやったわけではなく、税制としては入る方と出る方両々相俟って負担を願うのが良いのではないかという考えから登場したのであって、世界でも珍しい例になっているわけです。

課税水準 - 累進税率と比例税率

次に、個人の所得、消費両面に課税をする場合、どの位の水準で負担をお願いするのが適当かという、課税水準の問題があります。戦後、わが国の所得税は、一貫して累進税率を採り、現在は5%~40%の4段階となっています。一方、法人税は比例税率です。とすると、本当に所得税は累進税率でなければならないのだろうかという問題があります。 所得税は、まず人的控除(基礎、配偶者、扶養控除)を差し引き、その残りに税率を掛ける仕組みになっていますから、税率がたとえ1本でも、ある程度の人的控除があれば、結果的に累進負担になるわけです。
現実的に可能かどうかは議論があるにしても、一つの考え方として、所得税は比例課税に近い10%と20%の二本立て、住民税は10%一本という形で個人所得課税を組み立てるという議論があっても良いのではないかと思います。

事業所得と給与所得 - 給与所得控除

この問題を考えるときの焦点は、給与所得控除です。給与所得者には、収入のおおむね30%を給与所得控除として頭から差し引くことを認めています。そこで、昔から、「これ(給与所得控除)は一体なんなのだろうか」ということがよく言われていました。
一つには、サラリーマンの必要経費ではないかという話があります。しかし、サラリーマンは、法人(会社)に雇われ、経費は法人が払っている訳ですから、個人が払う必要経費が、そんなに出てくる事はありえないと思います。
もう一つは、自分で申告する事業所得者と天引き(源泉徴収)で納める給与所得者の所得の把握率の違いに対する配慮だと、かって言われていました。しかし、事業経理の透明化が進んできた現在、その理論が通用するのかなという気がします。

そこで、事業所得者とサラリーマンの違いは何かと考えると、事業所得者には赤字決算や倒産のリスク対応がある。一方、サラリーマンにはそれが無い。ただ、サラリーマンでも将来の会社倒産や定年等に備え、自分を充実させる例えば研修等の費用は必要かも知れない。しかし、それを必要経費として認めるのは難しい。そこで、同族会社の役員を除く一般のサラリーマンには、給与所得控除を半減する代わりに、収入の10%とか15%とかを差し引く「勤労性控除」が有っても良いのかなという気がします。
少なくとも、現在の給与所得控除が、そのままの形で「何時までもつのかな」という気がしております。

相続税、住民税均等割

冒頭、課税は個人に対する課税が中心であるべきと言いましたが、所得の入る方と出る方に課税したら、後は、出ずに残ったものに対する課税がバランス上必要です。即ち、相続税の問題です。相続税を納めている人の割合は、全国的に見ると現在は5%程度で、高くする必要は無いが、「薄く広く」課税する方向で考える必要があるのではないかと考えます。しかし、「広く」というと反対論が強くなかなか難しい問題ですが、時折そのような議論が行われているわけです。

最後に、近代民主国家を構成する個人がそこに存在し、権利を行使して国の組織に関与しているなら、最低限何らかの負担が有って良いのではないかという問題が、個人課税の基本問題としてあるわけです。これは、住民税の均等割の話です。 昭和25年の発足時の均等割額は、一人当たり国民所得の2%位に相当していました。これを、現在の水準に直しますと約5万円位に相当します。ここまで上げるのは大変ですが、発足したときの負担状況、個人の地位、個人課税問題の基本問題という事を考えると、経済水準の発展に応じて適度なものにすることは良いのではないかという気がします。
税金の話となると、どうしても懐に響く話ばかりになって、楽しい話でなく恐縮でしたが、以上で終わらせて頂きます。

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