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相続税対策の注意点

第3回 預金の引出しと相続税・贈与税の関係(2)

掲載日:2016/07/25

前回は、被相続人の生前にお金を引き出すことがテーマでしたが、今回のテーマは、死亡後に被相続人の預金口座からお金を引き出すことと相続税の関係です。

会員の方からあった質問の事例について分かりやすく説明します。

父が入院したまま死亡しました。相続人は、母とわたし(長男)の2人です。父の死亡後に、私は銀行に行き、多額の入院費用と葬儀費用を支払う必要から父の預金から500万円を引き出しました。

死亡後の父の様々な支払いが滞ると困るので、銀行には死亡したことを伝えていません。相続税の申告で困ることはないでしょうか?

入院費用や葬儀費用を支払うため銀行には死亡したことを伝えずに、父の預金からわたし(長男)が500万円を引き出しました。

銀行が父の死亡を知れば、相続人の意志と関係なく預金を凍結し、誰が来ても引き出しができません。銀行では、外回りの職員の聞き込み情報や新聞の死亡記事欄等から死亡情報の把握に努めているようです。そのため、入院費用や葬儀費用で使いたくても引き出せません。

例えば、父が入院したまま死亡したので、父の預金から長男が500万円を引き出したとします。

現在、銀行では、50万円を超える引き出しについては、窓口での免許証等の提示による本人確認、使い道は何か、代理人であればどういう関係か等々詳しく聞かれます。母か長男が引き出しできたとすれば、よくその銀行を利用していて、窓口の銀行員が家族の顔を知っていたと思われます。

では、引き出し後に銀行が父の死亡が分かった場合、引き出した預金を返せと言うでしょうか。おそらく言わないと思われます。死亡が分からない時点では、通常の引き出しとして手続きは完了しているため、金融機関の手続き上の落ち度はないからです。

次に、なぜ銀行は死亡した人の預金を凍結するのでしょうか。民法第898条では、「相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。」とされています。銀行が父の死亡を知っているが、相続人が何人いるかも分からない状況の中で、相続人の一人からの預金の払い出しを認めた場合、将来の相続争いに巻き込まれる可能性があるからです。仮に、母と長男の折り合いが悪く、長男が母に知らせずに500万円引き出し、そのまま自分の物として遺産分割の際にも出さなかったが、後日これが発覚したとします。この場合に、母は銀行に対して、法定相続人である自分の了解を取らずに長男に渡した、そのため自分はもらえる預金がもらえなくなったとして損害賠償請求の訴えを起こす可能性があるからです。以上は私見ですが。

反面、亡くなった当日でも、相続人全員の実印を押した遺産分割協議書があり、しかも印鑑証明書が添付されていて、仮に遺産分割協議書の中で◯◯銀行△△支店の普通預金は母のものとするとなっていれば、これらを銀行に提示することで当然に母が引き出すことができます。また、その銀行所定(各金融機関によって様式が違います)の書類に相続人全員の署名・実印があれば引き出し可能です。しかし、現実には、葬儀費用の支払までに遺産分割をできている人は少ないと思われます。

相続税の申告で困ることは無いでしょうか?

引き出した金額500万円は、手持ち現金の相続財産として申告しなければなりません。相続税申告のために、後日、銀行から残高証明を取った場合、例えば、亡くなった日の午前中に900万円の預金残があり午後に500万円引き出したら預金残400万円と記載されますので、500万円が申告財産から漏れることになります。相続税の申告後に税務署から指摘されると、加算税の対象となる可能性もあります。

★なお、未払いの入院費用と葬儀費用は相続税の申告で債務控除となりますが、詳しくは次回以降に。

執筆: 税理士 石倉祐司

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